店舗とECを運営する事業者では、会員情報を一元化することで、顧客体験を向上するオムニチャネル化に取り組むケースが増えています。
この取り組みが円滑に進むためには、お客様と最も近い接点の一つである実店舗のスタッフが、深く意義を理解し、貢献することが必要です。

一方で、店舗スタッフは日々多くの業務をこなす必要があり、オムニチャネル化のシステム導入当初に掲げられていた目標、理想が形骸化することも少なくありません。

この記事では、オムニチャネル化を実現した後に、店舗のコミットメントを維持し、向上していく手法について考えていきます。

なお、「オムニチャネル化への準備」において、店舗スタッフへの働きかけを行う際の留意点などは以下の記事に記載していますので、合わせてご参考ください。

オムニチャネル化の成功には店舗スタッフの継続的な関与が重要

店舗とECを運営する事業者におけるオムニチャネル化は、お客様の購買体験を向上し、お客様との長い関係構築を目指して行われるものです。
その性質上、一度システムや運用を導入すれば良い、というものではなく、日々の店舗やECのお客様との接点で利用されることで、価値を発揮します。

その中で、店舗スタッフは日々お客様に最も接するため、オムニチャネル化の意義を深く理解していることは、お客様の購買体験に大きな影響を与えます
店舗スタッフが店舗とECで顧客情報が連携されていることで得られる事業者、お客様それぞれのメリットを適切に理解していると、「会員証はお持ちでしょうか?お作りしましょうか?」の一言に実感が込められるようになり、お客様に気持ちが伝わっていくものです。

加えて、お客様の声を最前線で受け止める店舗スタッフの声は、オムニチャネル化で導入したシステム・プログラムへの最も活きたフィードバックの一つですので、オムニチャネル化の浸透を図るうえでも、最も参考になる意見の一つとして考えられます。

また、店舗スタッフを巻き込んでお客様の購買体験を向上していくことは、店舗スタッフの貢献度を高めることを意味し、売上以外の事業やお客様に対する自分の仕事のやりがいを作ることになります。
このようなやりがいは、業務満足度の向上にも繋がり、スタッフの定着へ繋がります。

実際に、筆者が提供するオムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」を利用するアパレルブランド「Darich」においても、ブランドコンセプトの「 ”トキメキ” と “感動” 」を提供するのはブランドの顔である店舗スタッフだと捉え、店舗スタッフへの啓蒙活動を行っています。

店舗スタッフの協力を高めるための方法

では、店舗スタッフが顧客体験の向上に貢献していくためには、具体的にどういう方法が考えられるでしょうか。
Omni Hubを利用する事業者様の例と合わせて、挙げていきます。

レジ通過者のうち、会員証がどの程度の割合で提示されたかを計測することは、店舗で実際に会員証の提示、作成の声がけがどの程度行われているかを知る基本的な方法の一つです。
この数値を確認し、目標として設定したり、店舗間で比較することで、店舗スタッフを巻き込んでいくことは、基礎的な取り組みとして挙げられます。

例えば、全国でアーノルド・パーマーなどの店舗を展開されている水甚様では、週次・月次で会員証提示率を確認し、数値が高い店舗の成功事例を社内で共有することで、全店舗の意識を高める取り組みを行っています。

また、特に会員獲得を強化したい期間に、店舗間で会員証提示率を競うインナーキャンペーンを開催している事業者様もおり、このような取り組みも効果的です。

なお、「どの程度の会員証提示率があると良いのか」ということは、事業者の特性などによって変わりますが、例えばアパレルで接客が非常に重視されるMAISON SPECIAL様では、会員証提示率が70%を超えているなどの事例もあります。

オムニチャネル化の運用開始後に会員証提示率を追跡し、自社の目標提示率を設定するのが良いでしょう。
Omni Hubでは、会員証提示率を週次・月次で報告する機能を有しています。こちらもぜひご活用ください。

【参考】Omni Hub サポートページ「店舗での会員証提示率を確認する

多くの小売事業者様において、店舗スタッフは従業員であるとともに、事業のファンの一人である、ということも多いのではないでしょうか。
そのような店舗スタッフの声を、まずは一人のファンとして発信してもらうように依頼する、ということも重要な施策です。

例えば、お酒を販売するIMADEYA様では、販売するお酒のレビューを書いてもらいたい、という状況に対して、まずは店舗スタッフがお酒のレビューを積極的に記入するよう促しました。お客様がこのような店舗スタッフをフォローしたり、レビューを閲覧する、という流れを作ることで、レビュー投稿を身近なものにするように仕掛けています。
商品のファンであり専門家でもある店舗スタッフの声が可視化されるというのは、お客様にとってとても有用なものになるでしょう。

多くの事業者において、店舗スタッフは、自身の接客によってお客様がどのような感想を持ったのか、を知れる機会は多くありません。

本記事をお読みの方の中にも、ご自身が店舗でとても良い接客を受けた際に、その感謝の気持ちを伝える先がなくもどかしい思いをした、という経験をお持ちではないでしょうか。

「店舗スタッフの接客が、お客様の店舗体験に貢献したのか」を可視化することで、接客の試行錯誤がより行えるようになるとともに、「お客様の体験価値が高い」スタッフが分かり、事業者側としてもよりよいスタッフ評価が行えるようになります。

例えばHEAVEN Japanでは、店舗での商品購入後に、店舗の体験をGoogle マップ等のレビューに記載するよう促すLINEメッセージを送付することで、店舗の接客体験を可視化できるように努めています。
加えて、店舗スタッフの接客満足度をアンケートで回答を求めることで、スタッフの活躍状況を可視化し、本部の人間が中々把握できない売上以外のスタッフの貢献を取得できるようにしています。

店舗スタッフの活躍が事業運営成功の鍵の一つ

実店舗の運営において、店舗スタッフが活躍すること、それによってスタッフの勤務満足度が高まることは、事業運営成功のために最も重要な要素の一つです。
スタッフの活躍を引き出すためには、スタッフがお客様や事業運営に対して大きな影響を与えている、と実感することがポイントです。
店舗とECを連携するオムニチャネル化によって、このような実感を高め、お客様の豊かな購買体験の実現や、事業者の事業運営目標の達成に近づくことができます。

Omni Hubでは、店舗とECの会員一元化に加え、店舗スタッフをいかに巻き込んで仕組みを運用・定着していくか、ということについてもご支援しています。
店舗を巻き込んだ施策の実行などのお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。