株式会社生活の木様は、ハーブ、アロマテラピー関連商品の原材料の輸入、製造そして販売までを流通一環で行っているメーカー兼小売りの企業です。全国約100店舗の直営店のほか、メディカルハーブガーデンや、アーユルヴェーダサロン、カルチャースクールなどを通じて、ハーブやアロマテラピーを普及・啓発してきました。
生活の木様では、オムニチャネル化実現のために2024年にECサイトをリニューアルし、オムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」やクラウドPOSレジ「スマレジ」を導入しました。
生活の木様がオムニチャネル化を推進した背景やOMO実践術について、EC事業本部マネージャー 中村様にお話を伺いました。
※本記事は、2024/5/21に開催されたShopify Partnersロードショー『「Shopify Plus」で実現する複数顧客接点の情報統合・分析の方法・事例紹介!』の登壇内容に基づいて作成したものです。
※記事の内容は、2024/5/21登壇時点のものです。
生活の木
「自然」「健康」「楽しさ」をテーマにハーブやアロマなど自然の恵みを活用してウェルネス・ウェルビーイングなライフスタイルを提案している。自社で植物素材の輸入・調達、加工・製造を行うメーカーであり、全国約100の直営店の他、カルチャースクールなどを運営している。
オンラインストア:https://onlineshop.treeoflife.co.jp/
インタビュイー
株式会社生活の木 EC事業本部 マネージャー 中村 佳央様
Shopify Plusへの移行でサイトの利便性を向上しOMO化を実現
― はじめに、貴社や生活の木さま、中村様のご経歴について教えてください。
弊社は1967年創業のハーブ、アロマテラピー関連商品の原材料の輸入、製造そして販売までを流通一環で行っているメーカー兼小売りの企業です。「自然・健康・楽しさ」をコンセプトにWellness & Well-beingを提案しています。
全国約100店舗の直営店の運営やスクールの運営を行うほか、ハーブやアロマがまだ一般に普及していない時代から、これらを普及させるため「アロマテラピー検定」や「メディカルハーブ検定」の協会設立に携わり、検定に関連する講座の運営なども行っております。
私は2014年の入社後、店舗やマーケティング部門を経て、2022年にEC事業本部という新しい部署を立ち上げ、マネージャーを務めております。
― 「生活の木」さまでは、2024年にECサイトをリニューアルし「Shopify Plus」へ移行されました。移行前は、どのような課題があったのでしょうか?
大きく分けて2つの課題がありました。1点目が「BtoCとBtoBが一体化したECサイトの仕様に関する課題」、2点目が「店舗とECの連携に関する課題」です。
まず1点目の「ECサイトの仕様に関する課題」についてですが、リニューアル前は、ほぼフルスクラッチで構築されたECサイトで、BtoC向けとBtoB向けの両方の機能が一体化していました。そのため、同じコンテンツでも、toC向けとtoB向けの商材が分かれているにも拘わらず同じサイト内に表示されていたため、お客様にとって大変分かり難いという課題がありました。
また、顧客情報の取得においても、BtoCでは「個人名」、BtoBでは「企業名と担当者名」など、欲しい情報が異なるものの、同じサイトで運用されていたことにより、それぞれの要望に沿った顧客情報の取得や管理が難しかったです。
他にも、フルスクラッチで構築されているため、ちょっとした改修であっても時間とコストがかかるという点も、効率的な運用の妨げになっていました。
続いて2点目の「店舗とECの連携に関する課題」についてですが、店舗とECの顧客情報が連携できていなかったという点に課題がありました。更に店舗のPOSでは購買金額までしか取得できていなかったので、購入商品の情報や、ワークショップの参加履歴などのデータは紐づけられていませんでした。
さらに、店舗の約6割は百貨店に出店しているのですが、百貨店の集約レジでは、顧客情報と購買データを紐づけることができません。こうなってしまうと本当にお客様の反応や求めているものが見えない状態となります。これは今後の商品開発からマーケティング施策に至るまで広く影響を与える問題であると認識していました。
システム移行で目指したのは「マイナスをゼロにするのではなく、プラスを生み出す業務体制への転換」
― オンラインサイトをリニューアルするにあたり「Shopify Plus」を選定された理由や、移行によって目指したことなど教えてください。
まず「SaaS型のECサイト構築サービス」ということを大前提に、サービスの検討を進めました。
弊社の場合、メディアなどでご紹介いただくことも多く、サーバーが弱いとアクセス集中によるサーバーダウンが懸念されますが、Shopifyであれば、サーバーダウンするということはほぼありません。これはShopifyを選択した1つのポイントです。
また、店舗POSとECを連携し、顧客情報の一元化をしてOMOを実現できること。サイトの改修であったり機能のアップデートを、エンジニアさんにお願いしなくても、自分たちでアジリティを持って運用ができることを目指しました。
そして最後に、BtoBに関することにはなりますが、これまでは、与信の設定やお客様の審査を全て紙ベースで行っていたところを、全てWebで完結できるようになる状態を目指しました。また、担当者が請求書対応や督促業務に追われていたのですが、これらの業務から解放し、CRMでメルマガを送ったり、新しいコンテンツを作成するなど、マイナスをゼロにする業務ではなく、ゼロからプラスを生み出す業務へ転換することを目指しました。
OMO化推進成功の鍵:現場課題を知るメンバーと共にプロジェクトを牽引
― 続いて、移行時のお話についてお伺いします。多くの店舗を抱える事業者様では、POSのリプレイスやOMO化推進にあたり、プロジェクト推進部と現場の連携に難しさを感じることも多いと思います。プロジェクト成功の秘訣などがあれば教えてください。
一部署だけでプロジェクトを進めるのではなく、現場を巻き込んでいくという点はかなり留意しました。今回のShopify Plusへの移行やPOSのリプレイス、OMO化の推進にあたっては、私が全体の取りまとめをしていましたが、新卒入社時に店舗経験のある若い社員が、POS側の対応や部門間をまたいだ調整を主導してくれたところが、プロジェクト成功の一番大きなポイントだったと思っています。現場を分かっている社員がコアメンバーとしてプロジェクトを推進することで、現場に即したPOSのリプレイスを行えたのではないかと思います。
また、やはり現場スタッフからは、慣れているオペレーションやシステムを変えることへの不安の声もありました。しかし、従来は「メモに購入商品を記録し、百貨店の集約レジで会計する」といった運用負荷の高いオペレーションがあったところ、今回POSをリプレイスしたことにより、これらの負荷が大幅に軽減されました。そのお蔭で、運用開始後3ヶ月もすれば、現場からの不安の声はほぼなくなってきたように感じています。
― 貴社では、ポイント付与に関して「会員特典」を複数設けていらっしゃいます。こちらもスムーズに移行できましたか?
日本アロマ環境協会(AEAJ)や、日本メディカルハーブ協会(JAMHA)などの会員特典が複数ありましたので、正直なところ全て移行できるのか不安な部分もありました。しかし実際には「Shopify Flow」を利用することで問題無く移行でき、オートメーション化をすることができました。
実は、移行前は店舗スタッフが手動でポイントを計算して付与を行っていました。そのため、ポイントの付け忘れや、付け間違いといったミスが起きてしまうこともありました。それが今では、スマレジ側に設定したボタンを押すと「Shopify Flow」が作動して自動的に計算されたポイントが付与されるようになりました。この仕組みのお蔭で、ポイントの付け間違い防止や店舗スタッフの負担軽減につながっています。
ECサイト・POSリプレイスで得られた効果
― Shopify、POSレジの「スマレジ」への移行により得られた効果があれば教えてください。
まずは、サイト運営の簡便化・低コスト化が実現できたことが一番大きな効果だと感じています。
フルスクラッチのサイトからShopify Plusに移行したことにより、サイトの改修やアップデートなど自分達で出来ることが増えました。また、改修前は要件定義費用や実装費用が必要でしたが、こちらのコストも削減することができ、オンラインストア運営の人員削減にも繋がりました。
続いて、顧客情報と購買情報の連携により、お客様の行動が可視化されたことです。
今回のシステム移行により「誰がいつ何を買ったのか」「オンラインとECを併用しているのか」「実店舗間を行き来しているのか」など、お客様がどのような行動を取っているのかが可視化することができました。
例えば、1カ月に25回店舗にご来店いただき、毎日ワークショップにご参加いただいているようなお客様もいらっしゃるということ、一方で、弊社が従来想定したものと異なるお客様の状況もあるのだということが、データを可視化して初めて気付くことができました。
先述の通り、以前も「ファンのお客様はいらっしゃるだろうな」「我々のお客様はこのような方だろうな」と、大まかな認識を持っていたものの、データを取得できるようになり、そのようなお客様がどのような行動を取っているのかが分かるようになったのは、今後の事業運営やマーケティング計画立案において大きく役に立つのではと期待しています。
最後に、在庫管理に関することになりますが、実売ベースでの在庫可視化と在庫適正化です。
これまで、POSデータでは「何を買ったのか?」というデータが取得できていなかったため、商品は「出荷ベース」のデータしかありませんでした。そのため、実は売れているように見えていても「店舗側に在庫として残っている」というような商品もありました。
それがスマレジの導入によって「実売ベース」のデータが見れるようになりましたので、商品の仕入れ部署や商品開発部署が、販売状況にあわせて追加製造の判断をしやすくなったというのも、リプレイスで得られた効果です。
他にも、以前は店舗来訪時に会員証を忘れたお客様に対して「3ヶ月以内にレシートを店舗に持参すれば、ポイントを付与する」という運用を行っていました。しかし、この運用は店舗スタッフの手間がかかるだけでなく、各スタッフの判断に依存しがちです。そのため、お客様とのトラブルに繋がる可能性も秘めており、心理的負担も高くなっていました。
それが、今回のシステムリプレイスにあわせて、Omni Hubの「レシート取引連携機能」を利用したことで、上記のようなポイントの後付けをお客様自身が対応できるようになり、有効期間も1ヶ月と定められました。これにより、店舗スタッフの手間や負担が軽減され、お客様が自身で完結できる運用が実現したことは、とても嬉しいことだと思っています。
店舗とオンラインの強みを活かした顧客体験の構築
― 「生活の木」さまは、オンラインからオフラインまで様々なチャネルをお持ちです。あらためて貴社が考える「顧客体験づくり」について教えてください。
弊社が取り扱う商品は「香りの商材」が多いため、初めての商品をいきなりオンラインでご購入いただくというのは、かなりハードルが高いと思っています。そのため、実店舗が担う役割は大きいと思っています。
店舗には、より良いお買い物体験を提供できる。オンラインには、重いものを大量にお届けできたり、定期購入ができたり、コンテンツを提供できるなど、それぞれの強みがあります。
今回、Shopify Plusを導入しお客様の流れが可視化できるようになったお蔭で、OMOやユニファイドコマースと言われる、一人ひとりのお客様に合わせて適切なところで接点を持ち、販売につなげる取り組みが出来てきたように感じています。店舗では体験価値を高め、オンラインでは利便性を高める。今後はこの両方を繋ぐ取り組みを強化していきたいと思っています。
― オフラインとオンラインで、現在強化されているお取り組みについて教えていただけますでしょうか?
店舗側では、一部の直営店で「KAORIUM(カオリウム)※」というAIを使った「香りの診断」など、新しい体験のコンテンツを増やしています。(※ KAORIUMはSCENTMATIC株式会社の登録商標です。)
◆ 関連情報:AIシステム「KAORIUM」を使った香りと言葉の融合体験&限定アロマブレンド作り
オンライン側では、インバウンドへの対応や海外への展開を強化しています。
今回、店舗とECの顧客情報を一元化したことで見えてきたことなのですが、特に札幌店でインバウンド比率が高まっているということが分かりました。ですが、店舗スタッフにいきなり多言語対応をして欲しいと言っても難しいため、ECサイトを多言語対応して、店舗のPOPからECサイトに遷移してもらい、スマホ上で説明を見ていただけるようにしました。これまでは、店舗側に多言語のポップを作ってもらっていたのですが、そうすると「あれも、これも」という感じでポップだらけになってしまって。今はみなさんスマホを持たれていますので、お客様としてもスマホで商品説明を見れた方が楽ですし、店舗スタッフ側からも嬉しいという声が挙がっています。
このようなことも含めて、以前よりも手軽に海外ともやり取りができるようになってきていますので、日本国内だけでなく、海外にも積極的に展開していきたいと思っています。
― 店舗、ECそれぞれに役割があり、それぞれの役割を強化していらっしゃるということですね。
顧客データの可視化により見えた課題 – 生活の木が取り組むCRM施策
― 最後に今後の展望をお聞かせください。
弊社のビジネスモデルとして、約7割がリピーターのお客様です。ですので、やはりCRMの部分が今後取り組むべき強化のポイントだと思っています。
これから様々な施策の検討や実施を進めていきたいと考えていますが、現在、効果が出ているCRM施策として「サンクスメール」があります。弊社の課題として、F1(初回購入)からF2(2回目購入)への転換があります。F2からF3へと進むと、それ以降の推移率は比較的高いのですが、ライトユーザーを次の段階へ繋げることが最も難しく、重要なポイントです。今回、顧客データの可視化ができるようになり、データの収集・分析をすることでも、この点が明確になりました。
サンクスメール施策では、初回購入のお客様に対して「他のお客様がどのように商品を使用しているか」の情報を提供したり、2回目・3回目の購入のお客様には「ワークショップの案内」や「定期購入商品の提案」など、コンテンツを分けてオートメーションメールを配信しています。その結果、このメールを起点に、日々一定の獲得効果を得られています。今後は、このF1からF2への転換をさらに強化するために、LINEも活用していきたいと考えています。
また、弊社のBtoBの部署ではSalesforceを使用していますので、このSalesforceのデータと店舗・ECの販売データを合わせて活用できるようにし、企業全体として「LTVを高めていくにはどうすれば良いか?」に取り組んでいきたいと考えています。
※本記事は、2024/5/21に開催されたShopify Partnersロードショー『「Shopify Plus」で実現する複数顧客接点の情報統合・分析の方法・事例紹介!』の登壇内容に基づいて作成したものです。
※記事の内容は、2024/5/21登壇時点のものです。
株式会社生活の木について
1976年より「自然」「健康」「楽しさ」を提案する原宿表参道の地で生まれたライフスタイルカンパニー。
国内外の提携農園(パートナーファーム)から、厳選したハーブや精油、植物油など、世界中の自然の恵みを調達。商品開発・製造・販売を行うメーカー機能の他、全国約100店舗の直営店のほか、カルチャースクールなどを運営する。またアロマを用いた香りの空間演出や他社商品のOEMなどBtoBにも力を入れている。
会社名:株式会社 生活の木
所在地:東京都渋谷区神宮前6-2-8
代表者:重永 忠
業務内容:ハーブ・アロマテラピー関連商材の輸入・製造・販売/直営店舗の運営/卸売・OEM/カルチャースクールの運営
Webサイト:https://www.treeoflife.co.jp/
オムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」について
「Omni Hub」(オムニハブ)は、「店舗とECをつなぎ、購買体験をアップデートする」をミッションに掲げる、オムニチャネルでの顧客体験向上に貢献するアプリです。初期費用なし、開発不要でShopifyで構築したオンラインストアとスマレジで管理する店舗の間で顧客情報を一元化することで、共通でのポイント施策実施やメッセージ配信など、顧客体験の向上による売上増加をご支援しています。
本アプリは、Shopify Experts、スマレジ Developers Expertに認定されている株式会社フィードフォースが提供しています。(※2つの認定を有している国内唯一の企業です。)
「Omni Hub」サービスサイト : https://omni-hub.jp/
「Omni Hub」Shopifyアプリページ:https://apps.shopify.com/omni-hub?locale=ja
「Omni Hub」スマレジアプリページ : https://apps.smaregi.jp/apps/114
「Omni Hub」サポートページ:https://omni-hub.notion.site/Omni-Hub-00d28b314cfa4b27b4e1f470be99ac4b